あえて「書かない」という分かりやすさ

2015.03.21

 
 
限られた字数で文章を書かなければならない場合、どの情報を入れどの情報を削るかは難しいところですが、わかりやすい文章にするためには、重要な情報をあえて書かないという選択肢も候補になりうるようです。
 
2015年3月19日付けの日経新聞では、KDDIの社長が料金プランやサービスの重要性についての考えを話す「一言」記事がありました。自社がすでに3年間続けてきたセット割引への自信と、今後は「通信分野にとどまらないサービスを提供する」との計画があるとのことです。
 
———「ニュース一言/KDDI田中社長」
顧客のサービス選びでは料金の優先度が高い。シンプルでわかりやすいメニューとお得さが不可欠だ。セット割引を3年間やってきた(当社の)優位性は簡単には崩れない
KDDI(au)の田中孝司社長はスマートフォンと光回線のセット割引で、同種のサービスを今月始めたNTTドコモに競り勝てると自信を見せる。料金だけでなく、「通信分野にとどまらないサービスを提供する」と一歩抜け出た価値提供をめざす。———
 
この小さな「一言」記事では、話題が「顧客は料金でサービスを選ぶ」→「料金プランはシンプルに、またお得さも大事」→「今後はサービスでの価値提供も」と移行しているようにも思えます。しかし、低料金でシンプルさだけが特徴的なサービスを提供するとも、サービス重視のメニューを増やすために値上げはやむを得ないなどとも述べられてはいません。つまり、冒頭での一文「顧客のサービス選びでは料金の優先度が高い」のだという考えが、一貫して記事の最後まで前提となっています。
 
実際にKDDIのサービス内容に注目してみると、携帯電話の通話料や通信料が定額になるプランや、それとセットで申し込むことで割引になるインターネット料金など、お得なプランが以前から用意されており、確かにそれらを組み合わせることで大幅に安く利用できます。
 
さらに、「料金面でも魅力的なサービス内容」とはどんなものかというと、手数料が無料のネット銀行や、ポイント還元率の高いクレジットカードやプリペイドカードが発行されており、便利である上に日々の生活の中で安く利用できるようになっています。
 
限られた紙面で伝えるためには、上記のように不変の事柄についてはあえて書かずに済ますことで、前提となっている考えはブレていないことを伝えることが可能です。例え「書かれていることが矛盾しているのでは?」と感じることがあっても、すでに存在している事実に注目することで、その「疑問」は杞憂であることが分かるようになっています。
 
新聞のような「事実」を伝える媒体では、「記載」することが必ずしも分かりやすいとは限らず、端的にかつ正確に伝えるにはあえて書かないことも重要である、と分かる文章ですね。